書籍詳細

薬剤経済学の活用

医薬品の経済的エビデンスをつくる・つかう

編集=津谷喜一郎(東京大学大学院薬学研究科・医薬政策学・特任教授)/アリエル・ベレスニアク(データ・マイニング・インターナショナル最高経営責任者《CEO》、フランス医療経済学会副会長)

B5判

144頁

ISBN978-4-86034-564-8

2008年11月発行

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薬剤経済学の基礎から実践までを実例を交えて幅広く解説した本格的テキスト!

医薬品の経済的エビデンスを"つくる","つかう"ために必要なものは何か―薬剤経済学の考え方を理解し,薬剤師実務において医薬品選択やアウトカムリサーチなどに活用できるよう,基礎理念から実践手法までをさまざまな実例を交えながら幅広く説明した


「序文」より(抜粋)

 本書は,医薬品の経済的エビデンスを「つくる」,「つかう」ために,製薬企業,行政,大学などさまざまな分野で活躍している実務経験者に執筆を依頼し,それぞれの視点から,薬剤経済学がどのようなものなのか,また薬剤師実務においてどのように活用することができるのかをまとめた,日本初の本格的なテキストである。
これから薬剤師を目指して勉強している薬学生向けのテキストとして,またすでに病院,薬局,大学,製薬企業で働いている薬剤師や薬学研究者,さらには医師などこの分野に関心を持つ研究者が,薬剤経済学の考え方を理解し,医薬品選択やアウトカムリサーチなどに活用できるよう,基礎から実践まで実例を交えて幅広く説明したものである。
そもそも医薬品の経済性に関する情報はなぜ必要なのか? 医療の経済評価とは,医療にかかる費用を抑制するためのものではなく,ヒト,モノ,カネといった限られた医療資源を最大限に活用して,医療サービス全体の効果を高める施策を見出すものである。日本で,医薬品は,国民医療費33兆円(2005年度)のうち,約14%を占める主要な医療サービスである。またほぼ2年ごとに行われる診療報酬改定において,医薬品の公定価格である薬価が,毎回引き下げを受ける特徴を持つ。医療費抑制政策の中で,主要なターゲットになっているともいえる。
だが,ある疾患について,単に医薬品は安価なものを使えばよいのであろうか? 短期的には費用負担は減るかもしれない。しかし相対的有効性や安全性を加味した場合,長期的には,病気の悪化や予想されない有害事象などによって,追加費用が生じ,社会や患者にとっての医療全体の費用負担は逆に高くなる可能性がある。薬剤経済学は,医薬品を中心とした医療資源投入(インプット)と,その結果生じる健康に対するアウトカム(アウトプット)を同時に評価して,費用対効果に優れる医療サービスを選択するのに必要な情報を提供する研究手法なのである。
第1章では,グローバリゼーション時代に医薬品選択と薬剤経済学がどのようにかかわっているのかを述べた。
第2章では,薬剤経済学の基礎的な考え方を理解してもらうとともに,世界的な標準手法として使われている薬剤経済学の方法論を紹介した。
第3章では,医薬品を開発する製薬企業の立場から薬剤経済学の活用を考えた。
第4章では,行政の立場から医薬品の価格がどのように決定されるのかといった薬価制度について概説した。
第5章では,医薬品を選択し使用する病院の立場から薬剤経済学と薬剤選択について論じた。
第6章では,ジェネリック医薬品(後発医薬品)について,その特徴や役割についてまとめた。
第7章では,「エビデンスに基づく医療」(evidence-based medicine: EBM)の考え方に沿ってエビデンスのある薬剤選択を支援するために必要な知識や手法について概説した。
第8章では,病院における医薬品の管理のための情報システムのあり方についても取り扱った。
第9章では,禁煙補助療法の経済評価の例を紹介する。

津谷 喜一郎
アリエル・ベレスニアク

目次

第1章 グローバリゼーション時代の医薬品選択と薬剤経済学
第2章 薬剤経済学の方法論
第3章 医薬品開発における薬剤経済学の活用
第4章 行政における薬剤経済学の活用
第5章 日本の病院における薬剤選択
第6章 ジェネリック医薬品の薬剤選択
第7章 薬剤選択とアウトカムリサーチ
第8章 病院情報システムにおける医薬品
第9章 薬剤経済評価の政策決定への活用―禁煙補助療法の経済評価を例として―