書籍詳細

腰椎・骨盤領域の臨床解剖学

腰痛の評価・治療の科学的根拠

著=Nikolai Bogduk/監訳=齋藤昭彦(東京福祉大学教授)

B5変型

268頁

原著第4版

ISBN978-4-86034-902-8

2008年09月発行

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腰椎・骨盤領域の解剖学はもちろん,臨床的な観点から,腰痛に対する評価・治療のための科学的根拠について,最新の情報を提供。腰椎領域の教育,臨床,研究に携わるすべての人にとって必読の書。


「監訳者の序」より


16年前,私は徒手的な理学療法(マニュアルセラピー)を勉強するためにシドニー大学の大学院に留学していた。わずか14名のクラスであり,臨床的な知識,技術を高めるための実践教育を受けていた。そのとき解剖学のクラスで使用されていたのが本書の第2版であった。本書を各自が読み進め,クラスで臨床的な問題を解剖学の見地からディスカッションするという実践的な講義であった。
当時,国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院理学療法学科を卒業して10年余りを経過していた私は大きなショックを受けた。日本でここまで詳細かつ臨床的に腰部の解剖を勉強したことはなかったからであった。当然のことながら,必死に勉強した甲斐もなく,最初の試験にパスすることができなかった。思えば,小,中,高と試験に落ちることがなかった私が,ハビリテーション学院の解剖の試験に初めて落ちて以来の2回目の挫折であった。
解剖学は学習者のレディネス(学習の準備状態)により得るものは大きく異なる。私自身,リハビリテーション学院でのサルの解剖,日本大学医学部での人体解剖実習,シドニー大学での人体解剖実習,東北大学大学院での人体解剖実習と今まで数回の解剖実習を経験しているが,それぞれの段階で大きな変化がある。回数を重ねるごとに新たな発見があり,受動的な解剖から能動的に求める解剖に変化し,日々の臨床の疑問点,機能を意識しながらの解剖実習となる。
第4版となる本書は,留学当時に読んだ第2版と比較すると確実に進化している。第2版にはなかった仙腸関節や腰椎のX線予想解剖学に関する章が加わっている。解剖学の対象となる骨,関節,筋の構造は大きく変化しないものの,新しい考えが紹介され,過去の理論が修正されている。解剖学の対象には大きな変化がなくても,解剖学は進化しつづけている。
本書は臨床的な観点から書かれ,腰椎・骨盤領域の最新の情報が提供されている。その証拠に,本書には日本の解剖学書や医学辞書などには登場しない用語や記載が多く出現する。また,各章には根拠となる参考文献が多数提示されている。たとえば,15章の腰痛の章の参考文献の数は300を超える。本書は,腰椎領域の教育,臨床,研究に携わるすべての人の必読の書であるといえる。本書が目指しているものは臨床とのコラボレーションである。本書は単なる詳細な解剖学書ではない。そのような本であれば,これほどまでに知的好奇心を刺激されることなく,翻訳には至らなかったであろう。
本書を読むことにより,臨床での疑問の多くが解決される。かつての私がそうであったように,読み進めるにつれて,読者のクリカルリーズニング(臨床推論)能力が飛躍的に向上するであろう。腰椎・骨盤領域のすべてが本書に網羅されているといっても過言ではない。自らが,見て,触れて,感じて,解釈することのすべての裏付けが本書にある。


目 次

 

1章 腰 椎
2章 椎体間関節と椎間板
3章 椎間関節―詳細構造
4章 腰椎の靱帯
5章 腰椎前弯と脊柱管
6章 仙 骨
7章 生体力学の基礎
8章 腰椎の運動
9章 腰部の筋と筋膜
10章 腰椎の神経
11章 腰椎の血液供給
12章 発生学と発達
13章 腰椎の加齢変化
14章 仙腸関節
15章 腰 痛
16章 不安定性
17章 X線写真の解剖
付 録