書籍詳細

キャンベル整形外科手術書全巻セット(全10巻+総目次/総索引)

総監訳=藤井克之(東京慈恵会医科大学教授)

ISBN978-4-86034-827-4

2005年03月発行

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総監訳者序文

整形外科手術書のバイブルとも言われています『Campbell’s Operative Orthopaedics』の最新版(第 10 版)が昨年に発刊されました。早速,エルゼビア・ジャパン社から,この節目の改訂を機に是非とも日本語の翻訳版を刊行したいのですが,いかがでしょうか? 実現できますでしょうか? との相談を持ちかけられました。私は,この企画は,我が国の若き整形外科医の勉学,そして国際的に適応する整形外科医の育成にとって,まことに意義深いものと判断し,その監訳を務めさせていただくことにいたしました。
本手術書を生んだキャンベルクリニックは,米国のテネシー州メンフィスに 1909 年,26 名のスタッフを揃えて開設されました。その後,スタッフや国内外からの訪問医師の増加,診療部門の拡大などに伴い,1998 年になってクリニックのメインオフィスがメンフィス郊外のジャーマンタウンに移されました。
1987 年 11 月,私は,47 歳にもなっていた年齢をも顧みず,膝関節外科,とくにスポーツ外傷の取り扱いを学ぼうとキャンベルクリニックに単身出かけて行きました。生活は,病院から車で 30 分程の林の中に建つ木造の小さなアパートで始まりましたが,この年の米国中南部は異例の寒波に襲われ,ホワイトクリスマス以降,しばらく雪は消えず,恐る恐る中古車を走らせて病院通いをいたしました。私を指導してくださった先生は David Sisk と言い,大変厳しい方でした。と言っても,私を大声で叱ったりはしませんでしたが,絶えず行動を共にしていた数名のレジデントには,昔の我が国の古い教室でみられたような教え方をしていました。今になって分析するに,やはり,あの教育法が科学,理論にのっとった立派な外科医を育てるために重要であり,今後,私も,これまでのやや甘い心を引き締め,若き日にキャンベル整形外科手術書を読破した努力を想い返し,教室員にその熱き心と多くの事に疑問を抱きつつ学ぶ姿勢とを示していきたいと思っています。近年,キャンベルクリニックから帰国して以来,長年ひそかに抱いてきた夢がやっとかないました。
それは,教室員をあの素晴しいクリニックに交替で短期留学させ,それぞれの領域でのエキスパートを育てあげることであります。外傷,関節,脊椎,手・足の外科など,キャンベル整形外科手術書を執筆している優れた指導者について数ヵ月間学ばせるわけですが,時間があいた折には,他の領域の診療班にも加わって幅広い知識と技術を習得させるようにしています。こうすれば,片寄った整形外科医を世に輩出させることに多少なりとも歯止めがかかり,さらには,“井の中の蛙大海を知らず”と称される医師の誕生を防ぐことにもなろうかと考えています。このような道を歩んできた私が,この度,キャンベル整形外科手術書の監訳をおおせつかりましたことは,なんとも表現し難い巡り合わせであり,関係各位に感謝しつつ,その重責を果たすことにいたしました。
キャンベル整形外科手術書は,その第 1 版が 1939 年に上梓されました。その時は,キャンベル先生が一人で執筆されました(1126 頁,1 巻)。その後の改訂は,編集者と執筆者を含め,1949 年に第 2 版(11 名,1643 頁,2 巻),1956 年に第 3 版(18 名,2124 頁,2 巻),1963 年に第 4 版(19 名,1778 頁,2 巻),1971 年に第 5 版(20 名,2044 頁,2 巻),1980 年に第 6 版(22 名,2433 頁,2 巻),1987 年に第 7 版(18 名,3374 頁,4 巻),1992 年に第 8 版(27 名,3870 頁,5 巻),1998 年に第 9 版(27 名,4075 頁,4 巻)と,その時々の新たな診断法や最新の機器を取り入れた手術手技が取り込まれ,現在に至りました。
この度,翻訳しました第 10 版は,原著は全 4 巻で 4283 頁のものを,日本語版は総索引を含め全 11 巻に分冊しました。ハンディーな厚さで,持ち運びやすくなり,診療の傍らで必要な項目をすぐに読むことができ,また机上にて系統立てて学ばれるのに最適かと思います。
各巻の翻訳担当は,それぞれの領域でご活躍されています先生方にお願いしましたが,膨大な作業をこなしていただきましたことに深く感謝申し上げる次第でございます。
本書がみなさまの座右に置かれ,日々の診療に活用していただければ,監訳者として望外の喜びであります。

 2003 年 8 月
総監訳 東京慈恵会医科大学
藤 井 克 之


 

日本の読者へのことば

『キャンベル整形外科手術書』の日本語版刊行に際し,「日本の読者の方々へ序文を」との依頼を受けましたことを大変光栄に思います。またこのことは,キャンベル・クリニックと日本の整形外科医の方々とが長年にわたり良好な関係を保ち,その成果を両者が互いに享受してきたことの証しでもあると感じています。
キャンベル・クリニック開院初期の頃から,日米の医師のあいだで活発かつ緊密な情報交換がなされ,これが当クリニックのみならず日本の整形外科医にとってもはかりきれないほど大きな価値をもたらしていると考えます。現在当クリニックは,毎年日本の一流医学部から「ベスト・アンド・ブライテスト」と呼べる若手整形外科医を数多く受け入れるという恩恵を受け,さらに日本の各大学整形外科科長の先生方とも親密な関係を築いていることは喜ばしい限りです。
本書では多数の整形外科手術術式を紹介しておりますが,整形外科の領域において数多くの日本人整形外科医の寄与は多大であり,これは本書参考文献に記載されていることでも明らかです。私たちはこういった日本人医師の方々とともに歩んでくることができたことに感謝すると同時に,日米の整形外科医のあいだで継続した協力関係を保っていけることを楽しみにしています。
私自身も含め今版Campbell's Operative Orthopaedics, 10th edition を担当した33名の編集者はみなこの日本語版が刊行されることを非常に喜びかつ楽しみにしています。それにもまして,本日本語版がみなさまのお役に立ち,日々の診療に有用であることを願ってやみません。

S・テリー・カナリ