書籍詳細

プライマリ・ケア整形外来マニュアル

外来で整形疾患をみるすべての人へ

著=Bruce Carl Anderson/監訳=松下 明(奈義ファミリークリニック所長)/佐古篤謙(奈義ファミリークリニック副所長)/長谷川徹(川崎医科大学整形外科准教授)

B5判

374頁

原著第3版

ISBN978-4-86034-761-1

2008年12月発行

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日常の一般整形外来診療で頻繁に遭遇する疾患を的確に網羅し,実際の診療場面で必要となる情報を順番に提供。保存的治療,また,注射手技に関しての具体的な記載は本邦に例を見ない。整形疾患を扱うプライマリ・ケア医はもとより,整形外科・リハビリテーション科の研修医にとって必携の指導書。また,整形外科専門医にも,保存的治療の整理に関して有益な内容を提供しており,手元に置きたい一冊。


監訳者序文(1)より


監訳者の一人である松下が本書と初めて出会ったのは,米国ミシガン州にて家庭医のレジデント研修をしていた1996 年であった.
整形外科疾患の診断と治療に外来で手間取る中,プライマリ・ケアを担当する家庭医のために書き下ろされた本書(第1 版)は,まさに目から鱗が落ちるような内容であった.
外来でよく出会う病態にターゲットを絞り,訴える症状のありよう(「夜に左肩を下にして眠ることができない」など),明快に説明された診察の要点(外転・外旋制限のキシロカインテスト後に筋力の確認),ステロイド注射を打つタイミングと紹介の時期,ストレッチ運動と等尺性筋力トレーニングを組み合わせた適切な外来リハビリなど,これまでに読んだどんな整形外科の教科書にもない,クリアカットな記載がそこにあった.
日本に戻り,岡山県北の奈義町で家庭医療後期研修プログラムを開始した.徐々に内容が充実していく第2 版,第3 版について,後期研修医と伴に抄読会を重ねるたびに,この本が日本語であったらいいのにとよく話し合っていた.
監訳者の一人である佐古が後期研修医として一緒にこの本を勉強していた際に,「それなら私たちで翻訳してみましょう」と言い出したことが今回の出版の発端である.これまで奈義ファミリークリニックで家庭医研修を行った者を中心に翻訳を担当してもらい,プライマリ・ケアにおける整形外科領域の名著を翻訳できたことは大きな喜びである.
川崎医科大学総合診療部時代に松下自身が指導を受けた,長谷川徹先生に整形外科専門医の立場で監訳に加わっていただいたことで,家庭医・プライマリ・ケア医だけでなく,若い整形外科医にも自信をもって読んでいただける内容となったと自負している.

松下 明
佐古 篤謙

監訳者序文(2)より


この本を読んで最初に感じたことは,日常の一般整形外来診療で頻繁に遭遇する疾患が的確に網羅されていることです.そして本書の最大の特徴は,実際の診療場面で必要となる情報が順番に提供される構成になっている点です.すなわち,難しい病態生理は省略し,概略,患者の訴え,診察手順,画像診断,特殊診断,確定診断,治療という順序に的確に述べられています.
そして,本書の最大の利点となっているのが治療に関する内容です.初期保存的治療に始まり,経過に沿って理学療法を含めて,その治療法の選択・変更を具体的に記載してくれています.これは実際の場面で,経過によって困ることの多い項目について,非常に参考となります.このように装具・サポーターの選択も含めて,保存的治療に関して具体的に記載されている指導書はこれまで本邦にはありませんでした.
もう1つの長所は,注射手技に関する具体的な記述です.注射部位の解剖が図解されており,実際の臨床場面において正確に目標部位をイメージすることが可能となっています.運動器疾患を扱ううえでは解剖の知識が不可欠です.特に,臨床解剖に精通することが正確な穿刺および注射治療を行うために重要となります.残念ながら,わが国の基礎医学教育においては,あまり臨床解剖に重点は置かれておらず,整形外科初期研修における穿刺・注射手技獲得は,主に現場教育を中心とした経験によって学んでいるのが現状です.そのため,整形外科研修を受けていない医師が運動器疾患を扱う場合,穿刺・注射手技は最も不安を感じる領域であろうと思います.この点に関しても本書は必要な情報を提供してくれており,これに匹敵する指導書は本邦にはありません.
本書は,整形疾患を扱うprimary care physicianはもとより,整形外科およびリハビリテーション科を学ぶ全研修医にとって必携の指導書となっています.また,整形外科専門医に対しても,保存的治療の整理に関して非常に有益な内容を提供してくれています.ぜひ本書をお手元に置き,日常の診療業務において診断・治療計画を進める際の参考にしていただければ幸いです.

長谷川 徹

 


目次

第I 部 プライマリ・ケア整形外来でよくみられる67の症状

第1章 頚部
頚部痛の鑑別診断
肩こり
頚椎神経根症
大後頭神経炎
顎関節症
第2章 肩関節
肩関節痛の鑑別診断
インピンジメント症候群
腱板炎
凍結肩(狭義の五十肩,癒着性肩関節包炎)
腱板断裂
肩鎖関節脱臼および変形性肩鎖関節症
上腕二頭筋腱炎
肩甲下滑液包炎
変形性肩関節症
肩関節多方向不安定症
第3章 肘関節
肘関節痛の鑑別診断
外側上顆炎
内側上顆炎
肘頭滑液包炎
橈骨上腕関節穿刺
第4章 手関節
手関節痛の鑑別診断
De Quervain(ドゥケルヴァン)腱鞘炎
手根中手(CM)関節の変形性関節症
ゲームキーパー母指〔母指中手指節(MP)関節尺側側副靱帯損傷〕
手根管症候群
橈骨手根関節への関節注射
手背ガングリオン
舟状骨骨折と重度の手関節捻挫
第5章 手指
手指痛の鑑別診断
ばね指
腱鞘嚢胞
デュピュイトラン拘縮
中手指節(MP)関節に対する関節注射
手の変形性関節症
関節リウマチ
第6章 胸部
胸痛の鑑別診断
胸骨軟骨炎/肋軟骨炎
胸鎖関節腫脹
第7章 腰部
腰痛の鑑別診断
腰仙椎捻挫
腰仙椎神経根症,椎間板ヘルニア,坐骨神経痛
仙腸関節捻挫
尾骨痛
第8章 股関節
股関節痛の鑑別診断
大転子滑液包炎
中殿筋滑液包炎/梨状筋症候群
変形性股関節症
感覚異常性大腿痛
大腿骨頭壊死症
強度の股関節痛(不顕性骨折,感染性関節炎および転移性大腿骨腫瘍)
第9章 膝関節
膝関節痛の鑑別診断
膝蓋大腿関節症候群
膝関節水腫
水腫がない膝関節への注射
関節血腫
変形性膝関節症
膝蓋前滑液包炎
鵞足部滑液包炎
ベーカー嚢胞
内側側副靱帯捻挫
半月板断裂
第10章 足関節および下腿
足関節および下腿痛の鑑別診断
足関節捻挫
足関節穿刺
アキレス腱炎
アキレス腱皮下滑液包炎
踵骨後部滑液包炎
後脛骨筋腱鞘炎
足底筋膜炎
ヒールパッド症候群
脛骨疲労骨折
腓腹筋断裂
第11章 足趾
足趾痛の鑑別診断
バニオン(外反母趾に伴う変形性関節症)
第1 中足趾節(MTP)関節内側滑液包炎
痛風
槌趾(つちゆび)
モートン神経腫

第II部 プライマリ・ケア整形外来で行われる骨折治療,画像・検査手技,装具・リハビリテーション

第12章 プライマリ・ケアでよく出会う骨折
骨折について
上腕骨骨折
鎖骨骨折
橈骨遠位端の骨折
脊椎圧迫骨折
肋骨骨折
股関節の不顕性骨折
足関節骨折
足の副骨
中足骨の疲労骨折(行軍骨折)
第13章 X線とその他の検査・手技
第14章 よく用いられるサポーター,固定装具,ギプス
頚部
肩関節
肘関節
手関節
手指
腰仙椎領域
股関節
膝関節
足関節
足部
第15章 理学療法のパンフレット
頚部の一般的なケア
肩関節の一般的なケア
肘関節の一般的なケア
手関節と手指の一般的なケア
腰部の一般的なケア
股関節の一般的なケア
膝関節の一般的なケア
足関節の一般的なケア

付録 骨折の種類,薬物療法,検査値
整形外科への紹介を必要とする骨折
硫酸グルコサミンとコンドロイチン
非ステロイド系消炎鎮痛薬
ステロイド
カルシウム補助食品・サプリメント
リウマチ性疾患における検査
関節液の検査