書籍詳細

病院薬剤師業務マニュアル

病院薬剤師業務の標準化に向けて

監修=日本病院薬剤師会/編集=日本病院薬剤師会中小病院委員会

B5判

210頁

ISBN978-4-86034-543-3

2004年10月発行

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病院薬剤師業務の標準化を視野に置き、病院薬剤師業務全般にわたって行うべき業務について、実務的内容、概念を解説。病院薬剤師が業務のスタイルを構築するための必携書。


監修のことば


ここ数年レギュラトリーサイエンスという言葉がクローズアップされています。

「調整科学」あるいは「評価科学」ともいわれ,物と物を調整する,物とヒトを調整する科学とされています。物とヒトを調整する「調整科学(評価科学)」とするならば,薬剤師のよって立つ所はレギュラトリーサイエンスにあり,薬剤師の役割は「薬に関する正しい評価をすること」となります。

私は「薬剤師って何をする人」と問われたとき,一言で言えば,「安全・安心な医療の担い手」であると答えます。

評価能力すなわち「正しい自己決定能力」のある薬剤師が,評価に耐え得る「独自性と説得力」を持つ薬剤師になることができます。薬剤師の役割は「正しい評価ができて評価に耐えられる薬剤師」として「薬に関するあらゆることに正しい評価をする」ことにあります。

具体的には

医療チームの一員として医療における安全管理のキーマンになります。
患者個々の情報を的確に把握し,徹底した薬学的管理をします。
そして「患者が薬を服用すること」に関して全責任を負います。
有効性・安全性の高い医薬品の開発とその市販後の育成に貢献します。
薬剤師教育6年制後の実習教育と生涯学習を充実します。

ということではないでしょうか。

薬局薬剤師,病院薬剤師というように,あたかも「2種類の薬剤師」が存在するかのように何かと論じられていますが,薬剤師としての本質の部分は一つです。

『薬剤管理指導業務マニュアル』第5版は第4版までの内容をリニューアルし,『病院薬剤師業務マニュアル』として衣替えをしています。

正しい評価ができて評価に耐え得る薬剤師となることで,安全・安心な医療の担い手として医療新時代を支えていきたい,貢献していきたい,そんな思いを込めて,また,第4版までの集大成として『病院薬剤師業務マニュアル』を監修・編集しました。

今後,『薬剤管理指導業務マニュアル』の精神は『疾患別薬剤管理指導ハンドブック』として引き継がれていくことを会員の皆様にお約束します。

2004年9月
日本病院薬剤師会 副会長
藤 上 雅 子
はじめに


『薬剤管理指導業務マニュアル』も第5版を迎え,書名も新たに『病院薬剤師業務マニュアル』として刊行することと致しました。今回は薬剤師業務の標準化に焦点を当てて,病院薬剤師業務の全般にわたって行うべき業務を挙げ,その実務的内容,概念を解説しております。日本病院薬剤師会中小病院委員会で作成した,病院薬剤師業務の概念図を基に各種業務を再度検証し,実践することで私たち病院薬剤師が真に医療に貢献し,患者から求められている医療の実践が行えると確信しております。近年,医療に求められる,質への要求・内容の開示・医療行為の記録形式・患者の医療に対する理解と同意のあり方など,医療に対する患者の要求はますます増大し,医療の環境は大きく変化してきております。
そのような中で,薬剤師は何をすべきか,治療に対してどのようにかかわり,どのような役割を果たすべきかを考えなくてはなりません。一人の患者に対しての薬物治療上のかかわりを中心にして,薬剤師は医薬品のすべてにあらゆる角度からかかわり,常に医療の質と安全を考え貢献していくことこそが,今求められている医療を実践することであり,薬剤師のかかわりなくしてはなし得ないことだと考えます。情報を収集し,分析することからすべての事柄は開始されます。分析された内容を基に実行され,その内容を検証し,さらに訂正が加わり得られた結果に対し評価を加え,次への蓄積される情報となるわけです。医療においても,治療過程は同じように考えることができます。ただし,医療は患者という大切な対象者が主役です。この主役を除いて,医療を進めることはできません。常に,治療に際しては患者主導の治療を考えるべきです。また,忘れてはならないのが家族とのかかわりです。医療者と患者,そして家族が三位一体になって初めて治療を開始し完了することが可能となると考えます。家族の理解,受け入れは治療に際しての患者の精神的支えになるばかりではなく,治療を完了するための大きな要件になってきます。特に,入院治療においては退院後の生活,継続される外来治療など,家族の理解がなくては成立しない場合が多く存在します。私たち病院薬剤師の業務に際しても常に家族を意識し,かかわりを持って接していきたいものです。多くの病院薬剤師の先生方がそれぞれの業務のスタイルを構築されるために本書を活用され参考にしていただければ幸いです。また,本書を発行するに当たり,ご執筆いただいた先生方に,この場を借りて厚く御礼申し上げます。

2004年9月
日本病院薬剤師会中小病院委員会 委員長
金 子 達 也

 


目次

第1章 病院薬剤師業務とは
安全で安心な医療の担い手として―薬剤師に求められていること―
病院薬剤師業務の変遷
第2章 入院患者への病院薬剤師の関与
病院薬剤師業務の流れ―入院から退院後まで―
第3章 病院薬剤師業務マニュアル―標準化に向けて
病院薬剤師として行う業務とは
薬物治療の実行
―処方せん鑑査から薬剤調製,与薬までの流れ―
―注射薬調剤―
―患者への情報提供―
薬物治療計画
―TDMによる処方設計への関与―
―クリニカルパス作成改定への関与―
―癌化学療法のレジメン管理―
薬物治療継続へのアプローチ
情報の収集・管理
―医薬品情報の収集・評価・整理・保管―
―患者からの情報収集,患者の処方歴などの整理・保管―
―診療記録からの情報収集―
―ほかの医療スタッフからの情報収集とほかの医療スタッフへの情報提供―
コストベネフィットへの貢献
医薬品などの管理
薬剤管理―医薬品の有効性・安全性評価を通じた薬物治療管理―
市販後調査への関与
新医薬品の開発(臨床試験)への関与
患者安全管理
環境衛生管理
第4章 薬剤管理指導業務─法と診療報酬の基準
薬剤管理指導業務―法と診療報酬の基準―
訪問薬剤管理指導業務―法と診療報酬の基準―
居宅療養管理指導業務―法と介護報酬の基準―

第5章 病院薬剤師業務Q&A
◎薬剤管理指導の施設基準について
Q1 DI室は独立した部屋でなくてもよいのですか?
Q2 DI室の薬剤師は,調剤などほかの業務を行ってはいけないのでしょうか?
Q3 DI室の広さについて施設基準はありますか?
Q4 DI室の薬剤師による情報提供の内容はどのような内容を行えばよいでしょうか?
◎保険請求について
Q1 初回指導は入院後いつ行っても算定できますか?
Q2 入院患者に対して,他院からの持参薬や,自院の外来で処方された薬についての指導を行った場合には,薬剤管理指導の算定はできますか?
Q3 月4回を超えて薬剤管理指導業務を行っても算定は同じなのでしょうか?
Q4 注射薬のみ投与されている患者に対して薬剤管理指導料の算定はできますか?
Q5 療養型病床群の施設においても薬剤管理指導料の算定は可能ですか?
Q6 薬剤管理指導料が算定できない施設はありますか?
Q7 医師の同意を得た旨はどこに記載すればよいのでしょうか?
Q8 平成16年度診療報酬改定により薬剤管理指導業務での変更点はありますか?
Q9 短期入院の患者の場合,検査や医師の治療方針が未定で薬剤管理指導開始が遅れがちになり1回の算定しかできないことがあります。効率の良い方法を教えてください。
Q10 麻薬管理指導加算について教えてください。
Q11 退院時服薬指導加算の算定要件について教えてください。
Q12 退院時服薬指導加算の算定日は退院日となっていますが,退院日に服薬指導をしないと算定できませんか?
Q13 退院日に投薬や注射がない場合は退院時服薬指導加算は算定できませんか?

◎実際の業務について
Q1 薬剤管理指導料を算定できる対象患者に,年齢制限はありますか?
Q2 服薬指導を行う際に,ベッドサイドで行わない方がよい場合がありますか?
Q3 薬に興味がない患者に対しては,どのような服薬指導を行ったらよいでしょうか?
Q4 患者の認識が痴呆などによって低い場合,服薬指導を行う意味がないと感じる場合があります。服薬指導を行う患者の基準をどのように考えたらよいでしょうか?
Q5 プラセボなどの処方時の服薬指導はどのように行ったらよいでしょうか?
Q6 長期入院患者や,入退院を繰り返している患者で,薬の変更や,検査データの異常もなく,指導する内容がなくなってしまった場合,何について指導したらよいでしょうか?
Q7 注射薬のみの患者に対する薬剤管理指導業務について教えてください。
Q8 小児患者に対する薬剤管理指導で,特に注意する点を教えてください。
Q9 薬の服用を嫌がる小児とその親への指導はどのようにすればよいですか?
Q10 病識のない患者に服薬の必要性を理解してもらえず,拒薬された場合,どのように指導したらよいか教えてください。
Q11 知的障害がある精神病の患者で,話し掛けても全く反応もなく,また,判断力も低いときは,どのように指導したらよいでしょうか?
Q12 精神科のない病院で,ほかの精神科からの持参薬については,どの程度まで説明してよいのでしょうか?
Q13 患者の中には,精神科に受診していて持参薬があるのに,それを隠す人がいます。そのような患者への対応はどのようにしたらよいのでしょうか?
Q14 患者自身がいつ服用したか覚えていないような,看護師が薬の管理をしている患者に対しては,どのように指導したらよいですか?
Q15 高齢者の場合,用量に一定の基準がないため,薬剤師のみの薬剤管理指導では対応できません。情報の共有化を図るにはどうすればよいですか?
Q16 治療上,麻薬服用であることを知らせていない場合,服薬指導をどのように行えばよいでしょうか?
Q17 麻薬を増量する必要があると思われるのに,患者が痛みを我慢しているとき,どのように対処したらよいでしょうか?
Q18 薬剤管理指導業務を行う上で,特に気を付けるような法律や規則はありますか?
Q19 薬物治療管理を行う上で,情報収集や評価方法の考え方として何か例のようなものはありますか?

◎指導録について
Q1 薬剤管理指導記録の保存には決まりがありますか?
Q2 指導録などの記入で効率よく使える表を教えてください。
Q3 薬剤管理指導業務の記録方法としてはどのような方法がよいでしょうか?
Q4 タイムラグのない記録を作るには,どうしたらよいでしょうか? また,記録に時間がかかるので,効率の良い方法があったら教えてください。
Q5 薬歴や指導録の活用の仕方がよく分からないので,教えてください。
Q6 指導や記録などきめ細かく行おうとするとどうしても時間が長くかかるのですが,どのくらいの時間を基準としたらよいでしょうか?
Q7 薬剤師が処方設計にかかわるための取り組み方のアドバイスはありますか?
Q8 薬剤管理指導における守秘義務について教えてください。

参考資料
薬剤管理指導料の変革
書式─薬剤管理表
書式─服薬指導記録
書式─薬歴管理表
書式─退院時服薬指導記録
書式─退院時服薬指導書