書籍詳細

オピオイドによるがん疼痛緩和 改訂版

編著=国立がん研究センター中央病院薬剤部

B5判

380頁

ISBN978-4-86034-287-6

2012年09月発行

Amazonで買う
立ち読み
 

eBook(電子書籍)   

 

電子書籍は、外部サイト M2PLUS(運営・販売:エムスリー株式会社)にて、購入できます。右のボタンをクリックすると、M2PLUSのページが別ウィンドウで開きます。

詳細を見る

書評 パンフレット

 

医療用麻薬について緩和ケアに必要な情報を漏らさず収載
6年ぶりの全面改訂版!緩和ケアに携わる全ての医療従事者に、おすすめの1冊。

●服薬指導を行うのに必要な知識として、オピオイドの基礎と臨床、麻薬関連法規、日常遭遇しやすい疑義をまとめたQ&Aで構成。
●オピオイドローテーションについても詳しく解説。
●痛みのタイプ別に適した鎮痛補助薬の選択法・使用方法や、副作用対策も掲載。

【主な改訂ポイント】
・全面的に内容を見直し、より見やすく、分かりやすく
・モルヒネ中心の記述から、オピオイド全般の記述に
・新たなオピオイド製剤や鎮痛補助薬を追加
・「麻薬管理」、「専門薬剤師の認定制度」、「診療報酬」、「各種収載データ」等を最新情報に更新

【目次】
第1章 がん患者への薬剤管理指導業務
Ⅰ 患者と接するときの基本的な心構え
Ⅱ 薬剤管理指導の実際
Ⅲ 患者に対する情報提供

第2章 医療連携における薬剤師の役割
Ⅰ 緩和ケアチームへの参画
Ⅱ 薬・薬連携における薬剤師の役割
Ⅲ がん患者の在宅医療
Ⅳ 緩和薬物療法認定薬剤師とその役割
Ⅴ 社会保険診療報酬について

第3章 がん疼痛の基礎
Ⅰ がん疼痛治療の基礎

第4章 鎮痛薬の薬理
Ⅰ 麻薬とオピオイド
Ⅱ オピオイド受容体
Ⅲ 鎮痛作用と構造活性相関
Ⅳ モルヒネ様オピオイド(作動薬)
Ⅴ オピオイド拮抗性鎮痛薬(部分作動薬)
Ⅵ オピオイド拮抗薬

第5章 鎮痛薬によるがん疼痛マネジメント
Ⅰ オピオイド各製剤の特徴
Ⅱ オピオイドによる疼痛マネジメント
Ⅲ オピオイドローテーション
Ⅳ 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
Ⅴ がん疼痛における鎮痛補助薬の使用法
Ⅵ 疼痛管理の現状と今後の展望

第6章 麻薬の管理
Ⅰ 医療用麻薬の管理と実際

第7章 Q & A
Q & A 情報提供
Q & A 相互作用・代謝
Q & A 投与方法(モルヒネ)
Q & A 投与方法(モルヒネ以外)
Q & A 副作用 
Q & A 鎮痛補助薬 
Q & A 管理

索引

【序文】
がんは、日本で1981 年より現在まで引き続いて死因の第1 位である。2010 年の死亡者数は約35 万人で、生涯のうちに約2 人に1人ががんにかかると推計され、依然としてがんは国民の生命と健康にとって重大な問題である。
本書の前版が2006 年に刊行された直後に、がん対策のより一層の推進を図るため、がん対策基本法が成立した。この法律に基づいて、がん対策を総合的かつ計画的に推進するための5 カ年「がん対策推進基本計画」が2007 年に策定されて、がん診療連携拠点病院の整備や緩和ケア提供体制の強化などが行われ、がんの年齢調整死亡率は減少傾向であるなどの成果を得られつつある。
しかしながら、人口の高齢化とともに、日本のがんの罹患者の数、死亡者の数は今後とも増加していくことが見込まれ、さらなる取り組みが求められている。
その中で、緩和ケアに関する要求の重みは大きい。がん患者とその家族が可能な限り質の高い生活を送れるよう、緩和ケアが、がんと診断された時から提供されるとともに、診断、治療、在宅医療など様々な場面で切れ目なく実施することが求められている。しかし、日本では、欧米先進諸国に比べ依然としてがん性疼痛の緩和などに用いられる医療用麻薬の消費量は少なく、がん性疼痛の緩和が十分でないと考えられる。また、がん医療に携わる医師の緩和ケアの重要性に対する認識もまだ十分とは言えず、国民に対しても未だ緩和ケアに対する正しい理解や周知が進んでいないと指摘されている。さらには、身体的苦痛のみならず精神・心理的苦痛への対応も求められている。このように、緩和ケアはまだ十分にがん医療に浸透していないと考えられている。
これに対して、2012 年6 月に策定された次の5 カ年のがん対策推進基本計画でも、「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が盛り込まれている。この第二次基本計画では、まず、がん医療に携わる医療従事者への研修や緩和ケアチームなどの機能強化などにより、がんと診断された時から患者とその家族が、精神・心理的苦痛に対する心のケアを含めた全人的な緩和ケアを受けられるよう、緩和ケアの提供体制をより充実させ、緩和ケアへのアクセスを改善し、こうした苦痛を緩和することを目指している。さらには、がん患者が住み慣れた家庭や地域での療養や生活を選択できるよう、在宅緩和ケアを含めた在宅医療・介護を提供していくための体制の充実を図ることも目標としている。このような状況で、オピオイドによるがん疼痛緩和の重要性が一層増しているといえる。
このような現状を踏まえ、さらに、2006 年の前版以降、新たなオピオイド製剤や鎮痛補助剤の開発、さらには診療報酬の数次にわたる改定など、大きく進歩した事項が多くあることから、この度、内容を全面的に見直して、改訂版を刊行することとした。
これまでの版同様、がん治療に関わる病院・診療所・保険薬局において、最前線での業務の参考にして頂くとともに、薬学教育6 年制により高度化が進む薬学生、大学院生の教育研修などにおいても活用して頂ければ幸いである。
2012 年9月

独立行政法人   国立がん研究センター中央病院薬剤部長
林 憲一